約30数年前、勤め先の研修会に、
益子在住の彫刻家ワグナー.ナンドール夫妻が講演に来社した。
講演の内容は忘れたが、当時担当した作品を
鋭く批評していただいた事を良く覚えている。
故ワグナーさんは若い頃建築を学んでおり、
自分のアトリエも自力で建築する人であった。
来社する前に、益子のアトリエを見学させていただいた事があり、
その変化に富んだ空間構成は今でも鮮明に覚えている。
後日2度ほどアトリエを訪問したが、
その度にアトリエの増築が行われ、様相が変化していた。
アトリエは今も、益子共販センターの東の小道を上がった
窯業指導所の先にある。
現在は奥様が故人の意志を引き継ぎ、
世界平和を願って、 歴史上の哲人をテーマにした
期間を決めて公開している。
実は講演をしていただいた当時、ワグナーさんが
私も昔訪れて感激した 、ウィーンの郵便貯金局の設計で有名な
「近代建築の父オットー.ワグナー」の血縁者とは 知らなかった。
(ご自身でも紹介しなかった。)
気がついたのは、去年ワグナーさんの伝記
「ドナウの叫び」-幻冬舎版ーを読んだ時であった。
その内容は、第二次世界大戦中ナチスを逃れ、
戦後ソ連の共産主義に揺り動かされる東欧を生き抜き、
日本に辿り着いたワグナーさんの波乱に満ちた物語である。
なおワグナーさんの作品は、現在も県立美術館に常設展示されている。