セピア色の写真

 

 

先月、中園 健さんの「はんえ展」の時。

一人でギャラリーの留守番をしながら

おかっぱ頭の女の子の絵をじっと見ていたら、、

胸の中にふと懐かしく過ぎるものがあった。

 

それがこの写真。 

昨年の春、母の遺品の整理をしていた時に

押し入れから出て来たものだった。

 

 

   

妹が誰かにいじめられて

泣きながら駆け寄ってきたところを

私が抱き上げて膝の上でなだめている。

小さい頃住んでいた家の近所の

千波公園での一コマである。

 

この光景を、たまたま通りがかりの

 宇大の写真部の学生が写してくれていたらしく、

写真コンクールに出品したところ

見事グランプリを受賞したらしい。

 

 

受賞出来たのもこの子達のおかげと、

大きく引き延ばした写真を大事に抱えて

 この公園まで来てくれて、

「この写真の子供を知りませんか?」と

手当たり次第に聞いて回ってくれたらしい。

 

知らない学生さんに、いきなり大きな写真を渡され、

びっくりしている私に向かって

  

「内緒で撮ってごめんなさい。 でも本当にありがとう!」 

 

最敬礼しながら、満面の笑みを浮かべていた

二人の学生さんの顔を今でも覚えている。

 

 

 

私が小学校3年生の名札を付けているから

妹はまだ幼稚園生だった。

 

父か母に鋏でばっさり切られたおかっぱ頭。

大粒の涙を浮かべて泣く妹は

姉の私が言うのもなんだが

本当に可愛かった。

 

今この写真を見てみると

10才でも、6才の妹のお姉さんを

ちゃんとやっている私がいる。

   

こんな至近距離で撮られていても

気がつかないほど必死に介抱してる自分が

なんだかおかしく、いじらしい。 

 

 

 

この写真を見慣れていたせいか、、

私も妹も、一緒に写っている近所の男の子に

いじめられたとばかり思い込んでいたのだが、、

その後40年も経って、面白い事があった。

 

 

 

母のお通夜が終わり、お浄めの席で

「あの時ようこちゃんをいじめたのは、

実は僕だったんだ。ごめんね。」と

妹と同い年だった従兄弟がカミングアウトしたのだ。

 

 

たまたま遊びに来てきた時に一緒に公園へ行って

些細なことで喧嘩にでもなったのだろう。

思わず砂場の小石をつかんで投げたのが

妹に当たったらしい。

 

まさかその時の様子が

こんなに大きな写真になって残されるとは

思いもしなかっただろう。

 

あれから従兄弟が遊びに来る度

うちの茶の間にはあの写真が飾ってあって、、

あの時いじめたのは自分だと、

人知れず胸を痛めて来たのだろう。

思えば、従兄弟が訪ねてくれる回数が

あれからめっきり減った気がする。

 

 

従兄弟はずっと心の傷として持っていたんだねと

妹と二人、素直に申し訳なく

そしてなんだか嬉しくなった。

長く生きてくると、いろんな事があるものだ。

 

 

 

 

宇大の学生さんが届けてくれたもう一枚の写真。

これはボツになった方。。

 

「あの子にやられたんだぁ~!」と指差す妹と

一緒にあんぐりと口を開けて、怒っている私。

 

 

 

しみだらけで、ボロボロになってしまった写真。

でも大事にしなくてはと思った。

 

この写真の存在を

思い出させて下さった中園さんに感謝します。